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蟲師 #12「眇の魚」と#13「一夜橋」

TV感想復帰第一弾は、蟲師の#12話と#13話で。
しばらくは、書こうと思って溜まってた番組ごとに2~3話ずつまとめて上げていきます。

■ #12「眇の魚」

物語りも折り返しを迎えようとする中、今明かされるギンコ誕生秘話。
・・・という安直なコピーとは無縁な過去語り編。
悲しい物語ではありますが、それを大仰に感情を昂らせて表現するのではなく、孤独な魂どうしが触れ合ったゆえの哀しさ、切なさが、ただ事実とともに描かれ、それが逆に深く静かに心に残ります。
瞼の光」で触れられたギンコの左目の闇の理由も語られます。

この物語でギンコの名前の由来が、ある蟲の名前であることが語られるのですが、その名ゆえに、今のギンコには、この物語で語られた過去の記憶がないということも、私たち視聴者(読者)にも明らかにされます。

実の母親との死別、一時の生活とはいえ肉親の情に近いものを感じていてた”ぬい”との別れ。
悲しい記憶ではありますが、その記憶さえも失くしてしまったことは、本当は凄くツライこと。
でも、記憶とともに自身の存在さえも失くしかねないところを救ったのが、”ぬい”が語った「ギンコ」という言葉。
それで全てが良かったというわけではないのですが、この名を得たということが、”ぬい”により、新しい生、新しい存在を得たことでもあるのが、一つの救いであったと思うのです。
儚げな存在である生命でも、名を得ることにより実存として認識され、魂とともに在ることができるようになる。
だから、古来より真の名を知る(得る)=言霊というのは凄く大事なことなのですね。

nui ”ぬい”を演じるのは、渋く恐いナレーションも担当している土井美加。「一条くん!」とか言ってた頃とはエラい違いです。(笑)
全てを覚って静かに消えゆこうとしていた”ぬい”ですが、偶然とはいえ出会ったヨキとの暮らしにココロ癒されていたのでしょう。
この惚けた表情が、いいです。

ginko 子供の頃のギンコ=ヨキを演じるのは沢城みゆき
なかなか味のある声の演技をしてます。少年役も似合うじゃないですか。
今回の事件を経て、銀髪碧眼となったギンコの表情は、ヨキの頃の子供っぽい顔と比べて、すごく大人びています。
辛い現実でも、厳しい事実を乗り越えていくことで、少年は成長していくものです。

■ #13「一夜橋」

どこかには救いのある他の話から比べると、「枕小路」以上にこれまでで一番救いのない話です。
物語の半分ほどで、蟲の影響で生きているようには見えるものの、既にハナは死んでいるということは語られてしまったので、死んでしまった者への想いに引きずられた結末になってしまう(ゼン自身もハナと同じ境遇となってしまう)ことは、ある程度予想できたのですが、めっちゃ救いのない話となってしまいました。

一夜橋が片方にのみ渡れ戻ることはできないというのは、生きていくことはどこまでも一方通行で、失われた時間や生は二度と戻ることはないという比喩でしょうか。
それでも、ここで救いを与えようとしたら、不幸な運命ゆえに、ともに現世での命は絶えたとしても、蟲に紡がれた二人の想いが一夜橋と重なり合って、新しい生への輪廻(生命の源流=光酒)となっていく様を見せるとかでもよかったのでしょうが、この蟲師という作品、不可思議な蟲を題材にし、そこに表れる人の想いを表現しながらも、起こる事象はそんな人の想いなど微塵も関係なく、すごく冷徹なのです。
それは、ぬるい人の感傷など受け付けない自然の摂理とでも言うのでしょうか。

それにしても、戻ってはならない、後ろをふりかえってはならないという状況は、古事記でイザナギがイザナミを迎えに行った黄泉比良坂での顛末を思い出してしまいましたが、変わり果てたイザナミから逃げ出した薄情なイザナギに比べ、ハナへの想いを絶ちきれなかったゼンの姿はすごく哀しみに満ちていました。

zen 少しでも永く生きていてほしい、どんな姿でも生きていてくれるだけで、自分自身も生きていられると想うゼンの姿は、死期を宣告された人を見守る者の気持ちを見るようです。
現実においては、人の尊厳をなくしてまでの延命治療には疑問視しているのですが、それでも、お話の中のことではなく、実際、自分の命と変えても生きていてほしいと願う気持ちが自然に起こるのが人間と思うのです。

でも、それだからこそ更に、最期まで看取った身としては、亡くなった人への想いに引きずられたり、あだおろそかに死んではならないと痛感するのです。

ゼンの不幸は、ハナが亡くなる原因に自分が関与していたことゆえに、そのような心の葛藤に抗えなかったことですが、それもまた愚かとは言えない人間の哀しさですね。

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毎回思うのですが、原作の通りにアニメ化しているのに、原作を読んだ時とはまた違う印 [続きを読む]

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